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白金 SS1 BLDG.

SS1

西側全景を見る。

所在地

 

設計・工事

 

東京都港区白金

 

 

2022.06~2022.10/2022.11~2023.06

敷地面積 69.87 ㎡
建築面積 55.84 ㎡
延床面積 100.79㎡
構造、規模 RC壁構造
用途 飲食店舗、共同住宅
計画概要

狭窄状道路の拡幅による地域への開放

地域コミュニティの結節点

大小のスクエア開口によるランダムな分散配置
プランの均質化を避け、建物のアイデンティティ

を特徴付ける
地域コミュニケーションの場としての飲食店舗

 

計画敷地については従前の建物が古くからあり、

木造2階建の家屋が建っていました。もともと接

道は主要な西側約6mの前面道路と北側2mの

側道による二面が道路に面した角地であり、こ

の北側の2m道路はそこを介して奥の地域住民

が必ず利用する主要な通りであった。いわゆる

私道の狭窄状道路としてボトルネック状での通

行の妨げとなっていた状態でした。もちろん、

建替え等する場合には敷地を2m後退し、道路

を拡幅する必要があった。

元々、間口約6mあった敷地は道路として2m

削られ、間口約4m、奥行約14mとなり、この

細長い敷地に飲食店と共同住宅の計画を最大可

能なボリュームとして計画することが要求された。

 

まず計画にあたって、1階には店舗を計画し、周

辺の閑静な住宅街に対して周辺住民の憩いの場と

しての機能を盛り込むよう計画の主軸に取り入れ

ることを考えた。私道の北側2m後退スペースは

道路として地域に提供すると同時に計画建築側の

一体の拡張スペースとしてのとらえ、敷地の犬走

としての余剰スペースと合わせ、一体利用可能な

ように敢えて既存道路のアスファルトとは違った

モルタル仕上とした。北側道路は30m先は行き止

まりとなるため、車の進入もなく飲食店舗の外部

有効活用スペースとすることが可能で、地域にと

っての生活の動線ともなり、地域コミュニティの

結節点となるように計画している。

 

建物全体に関してはコンクリート打ち放し仕上と

し、開口については大小のスクエア開口をメイン

にランダムな分散配置とすることでファサードに

ある種の不均質なリズムとアイデンティティを与

えている。スクエア開口は窓としてのアルミサッ

シ、スチールサッシ、コンクリートによる強調フ

レーム、バルコニーや廊下の開口としてデザイン

している。 1階店舗は大開口のFIX窓として通り

からの見通しに配慮し視認性を重視し、2階・3階

住戸においては中小スクエア窓やバルコニーに設

けた横格子ルーバーで通りからの視認を遮ること

に配慮している。また上下階住戸でのバルコニー

位置、窓開口位置を違えることで窓からの景色、

光の入り方に変化があり、同一になりがちな共同

住宅プランにバリエーションを設け、狭いながら

もプランの均質化を避けることで建物のアイデン

ティティを特徴付ける計画とすることを趣旨とし

ている。

 

2階・3階住戸プランについては、仕切りのないワ

ンルームとして計画した。RC壁構造特有の壁量配

置が必要となり、長手に対して袖壁として構造壁

を設ける必要があった。構造壁をプランニングと

の兼ね合いで位置等調整し、一つの空間を建具に

よる仕切りを用いず緩やかに分節してリビング、

ダイニング、ベッドスペースを入居者に使い方を

委ねる形で計画している。                                                      2階住戸プランはミニキッチンによるリビング主体

型プランである。リビング、ベッドスペース主体で

の生活が予想される。また3階住戸プランは、ペニ

ンシュラ型といわれる対面型キッチンで、キッチン

を暮らしの中心に置く生活が予想されるプランで

ある。

上下階ではバルコニーの位置、窓開口の位置、キッ

チンの位置も違うので光の屋内への採光も中から見

える景色も生活スタイルも全く違う暮らしが予想さ

れ、入居者の世代や世帯も幅広く受け入れが可能と

考えている。

 

バルコニーの位置は住戸によって西向き、北向きの

違いがあり、光の入り方や景色がそれぞれ異なる。

またバルコニーの先端には横格子による再生木ルー

バーを設けることで外部からの視線を遮ると共に、

採光と換気を有効とする等の効果で、閉鎖がちな大

開口窓も常に開け放つことが可能なように計画した。

いわゆる内部の拡張スペースとして、部屋の延長的

感覚でもあり環境や社会との緩衝バッファーとなる

よう計画している。

 

本来階段は避難のため、避難に容易な道路側に配置

するのが良いのだが、隣地側に凸の鍵型敷地の特性

を生かし、またファサードに屋外階段が見えるもの

とせず、鍵型部に填めることでスッキリしたファサ

ードとすることが可能となった。

 

周辺住民にとって道路の拡幅によって地域住民への

生活動線の提供ができ、また住宅街の飲食店舗とし

て地域住民の憩いの場として地域に寄与することが

できたのではないかと感じています。今後飲食店舗

を通して地域にとってはならないコミュニティの場

になるよう地域根差していって欲しいと期待してい

ます。

写真撮影 村山博敏